【映画とカルチャー・音楽】『世界侵略: ロサンゼルス決戦』はB級SFアクション映画の佳作

『世界侵略: ロサンゼルス決戦』とは、アメリカ海兵隊と地球外生命体のバトルを描くSFアクション映画。監督はジョナサン・リーベスマン、主演がアーロン・エッカート。どことなくB級映画の雰囲気がありながらも、映画としてのほどよい緊張感とワクワク感のある佳作だ。

【こんな人におすすめ】『世界侵略: ロサンゼルス決戦』の魅力とは

『世界侵略: ロサンゼルス決戦』は2011年公開のSFアクション映画。主演のアーロン・エッカート以外に目立ったスター俳優はおらず、せいぜいR&B歌手のNe-Yo(ニーヨ)が小隊の一人を演じているくらいでやや地味な印象。

そのため映画的な”華”はないが、リアルで緊迫感のある戦闘シーンが連続して描かれる。それに加え各キャラの人間模様、地球外生命体との絶妙なパワーバランスなど、アクション以外の面でも魅力ある作品だ。

オチのつけ方は一時期流行ったスタイルで既視感があるものの、全体的にはただのB級映画ではない面白さがある。エイリアンSFが好きな人、ちょっと変わった戦争映画(ミリタリー作品)が観たい人に安心しておすすめできる。

映画の『世界侵略: ロサンゼルス決戦』のあらすじ

『世界侵略: ロサンゼルス決戦』より

ここで『世界侵略: ロサンゼルス決戦』のあらすじ・登場人物を軽く紹介していく。ネタバレはしないので見鑑賞の人もご安心を。

『世界侵略: ロサンゼルス決戦』の登場人物

『世界侵略: ロサンゼルス決戦』はB級映画ながら無骨な作風で、登場人物は軍隊の一小隊のメンバーのほか、一部の指揮官などに限られる。各キャラに人物的な背景が設定されており魅力的だが、ここで代表的な5人を紹介しておく。

ナンツ二等軍曹:本作の主人公で、過去の任務で部下を亡くしたトラウマを抱えている。しばらく実戦ではなく教官として活動し、そのまま除隊でフェードアウトしようとしていたところ、最後の任務として地球外生命体との戦いに身を投じていく。

マルチネス少尉:地球外生命との戦いにおいて、ナンツ含む自身の小隊を率いる。士官学校時代からエリートとして活躍していたものの、まだ若いため実践での経験不足が否めない。戦いを通してナンツらメンバーとの絆を深めていく。

イムレイ伍長:マルチネス小隊の分隊長で、経験豊富なサブリーダー的存在。随所でマルチネスやナンツをフォローする。

ロケット伍長:マルチネス少尉のもとで活動。実兄はナンツの指揮下で戦死しており、彼に不信感・憎悪を募らせている。

サントス空軍技能軍曹:戦闘地帯や地球外生命体の攻撃手段などについて調査する。小隊とは別動隊だったが、途中でナンツらと合流して、ほかの隊員にはない視点で活躍していく。

開幕から愚直なまでのアクションシーンの連続!

『世界侵略: ロサンゼルス決戦』より

老兵・ナンツは過去のトラウマから実戦を避け、指揮官へ「除隊」を申し込み隠居生活を送ろうとしていた。一方で、地球に突如として地球外生命体が襲来し、アメリカ西海岸を圧倒的な武力で蹂躙し始める。ナンツはエリート兵であるマルチネス少尉の小隊へ穴埋め要因として配属、最後の戦いに身を投じていく。

ナンツは地球外生命体との戦闘に苦戦しながらも、小隊メンバーたちと協力して敵の弱点を模索する。彼らは勝利を掴み取ることができるのか・・・。

ちょっぴり感想!

全体のあらすじは以上で、ストーリー自体はSFアクション映画としてなんの捻りもない。また、結末はなんとなく読めるというか、結末ありきでそこまでにどのような見せ場があるのかに集中すべき作品だろう。

そのうえで、映画的な見せ場はそれなりに用意されている。一貫して接写やユレ・ブレのあるカメラワークによる戦闘シーンは魅力的だし、音の演出も緊張感あり。地球外生命体周りのゴツいガジェットや習性なども良い。アーロン・エッカートが存分に主人公している点や、脇を固める小隊メンバーの個性も非常に豊かで面白い。

一方で、セリフ回しやCG処理がB級っぽい点、加えてオチがややありきたりなところは不満。

『世界侵略: ロサンゼルス決戦』の舞台はアメリカ西海岸!カリフォルニア州のカルチャーとは?

本作の決戦の舞台となった「ロサンゼルス」は、アメリカ西海岸の代表的な都市であり、19世紀のゴールドラッシュから現代にいたるまで経済・文化どちらの面でも発展し続けている。東海岸の「ニューヨーク」と比肩する規模を誇り、様々なカルチャー・ライフスタイルの発信地として知られる。

ファッションや生活空間にどこかゆったりとしたムードが漂い、自由に生活を楽しむ風土、サーファーたちの空気感など、ほかの都市にはない独特なカリフォルニアスタイルが特徴的だ。そのロサンゼルスが地球外生命体によって壊滅的な被害を受けたら・・・なんとも、嫌な想像をしてしまいそうだ。

ハリウッドの本場・ロサンゼルス

ロサンゼルスは映画を語るに外せない「ハリウッド」の本場として知られ、特に1930~1950年辺りは名実ともに”黄金期”として文化的に映画が栄えた。大富豪の一生を描いた傑作『市民ケーン』、不朽の名作恋愛ドラマ『カサブランカ』、オードリー・ヘプバーンの魅力大爆発の『ローマの休日』など、ハリウッドで生まれた名画の数は枚挙にいとまがない。映画の発展はハリウッドとともにある、そう言っても間違いはないだろう。

さて、地球外生命体がロサンゼルスを侵略すると、映画などカルチャーの中心地・ハリウッドも大打撃を受けること必至だ。例えば、ハリウッドのシンボル「ハリウッド・サイン」や「チャイニーズシアター」の映画スターの手形・足形は跡形もなく消え、おなじみのロケ地なども悲惨な状態になるだろう。ハリウッド各所にあるだろう映画に関する史料なども消え失せる。

OPの『カリフォルニア・ラブ』でもお馴染み!ウェスト・コースト・ヒップホップ文化

本作に沿って考えるならば、「ウェスト・コースト・ヒップホップ」もロサンゼルス発のカルチャーとして忘れちゃいけない。本作のOPを飾っているのは、西海岸への愛をラップしている『カリフォルニア・ラブ』という曲(もしかしたら元ネタを流していたかもしれないが・・・)。Dr..Dreプロデュースで大人気となっていた2Pacの代表曲の一つであり、西海岸の自由な気風を表現したヒップホップクラシックだ。

ロサンゼルスからは『カリフォルニア・ラブ』のほかにも名曲は数多く誕生しており、どれもが西海岸賛歌に満ちたものばかり。ニューヨークで流行したイースト・コースト・ヒップホップが、どこか都会的でスタイリッシュだったことに対して、西海岸のヒップホップは自由でマッチョ。対照的でライバル関係の東西ヒップホップ抗争はギャングも巻き込み、2PacとThe Notorious B.I.G.の死という悲惨な結果を招いたものの、お互いが地元を愛しラップしていたのは素晴らしいことだった。

2Pac・Dr.Dre・Snoop・ice Cube・Eazy-E・Ice-Tなど、あの頃の西海岸アーティストたちが愛したロサンゼルスの景色・・・たとえ地球外生命体でも奪うことは許されない。エッカート、守ってくれてありがとう?笑

映画『世界侵略: ロサンゼルス決戦』はエイリアンSFやミリタリー好きなら必見の作品

『世界侵略: ロサンゼルス決戦』はドストレートで無骨なSFアクションを堪能できる作品。随所で見せ場があり、飽きない2時間を過ごせるだろう。SFなどに抵抗ない人はぜひおすすめ!