【映画と音楽・お酒】『Chef』は五感で楽しむグルメ×ヒューマンドラマ作品

Chef』(邦題『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』)とは、実力派の料理人の成長を描いたヒューマンコメディ映画。監督・脚本・主演を務めたジョン・ファヴローは、マーベル作品の『アイアンマン』を手掛け、同シリーズを軌道に乗らせた立役者としても知られる。

【こんな人におすすめ】『Chef』の魅力とは

『Chef』は2014年に公開されたヒューマンコメディドラマ。映画の中には何ともおいしそうなグルメ演出、アメリカ南部を巡るロードムービー的な要素、そしてラテンミュージックを中心とした音楽映画的側面がプラスされている。

映像美と効果的な音楽演出によって五感を刺激する贅沢な映画だが、家族愛・友情などを軸にしたヒューマンストーリーも十分に分厚い。脚本もコメディ要素があり面白いので、なんとも隙のない作品だと思う。一方で、コメディ的なご都合主義展開は僅かながらあるため、そういった部分が耐えきれない人はおすすめできないかもしれない。

映画『Chef』のあらすじ

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ストーリーの軸は一度挫折を経験した主人公が、家族や友人らの支えもありつつ成長していくというものだ。あらすじを紹介する前に、主要人物を整理しておく。

主人公・カール:一流レストランの総料理長を務めるシェフだったが、上司との軋轢からレストランを去る。失意の中にいたが、周囲の支えもあり料理人として再起を図るのだった。

パーシー:カールの息子で父との関係は適度に良好。SNSなどを駆使して、父の新しいビジネスをサポートする。

イネズ:カールの元妻でパーシーの母。カールとは離婚してから疎遠気味だったが・・・?

マーティン:カールのレストラン時代から部下。カールにとっては仕事仲間であるとともに、料理への情熱を共有する良き理解者。カールの新しいビジネスを、パーシーとともに親身にサポートする。

ラムジー:カールの料理を批判したグルメ評論家。影響力は絶大で、良くも悪くもカールの人生に新たなきっかけを与える。

リーバ:カールのレストラン時代の保守的な上司で、料理の方向性で揉める。

実力派シェフ、一流レストランやめるってよ

創作意欲のあるシェフのカール・キャスパーは、保守的な総支配人とメニューをめぐって軋轢が生じてしまう。そんな中で、とある有名グルメ評論家が「つまらないメニューを提供し続ける総料理長」と批判、しまいには上司からクビを宣告されてレストランを去ることに・・・。

失意の中でカールは再就職活動を開始するが、以前のSNSの炎上に加えて、店内でのトラブルの模様がインターネット・SNS上で拡散したことで、なかなか再就職先を見つけられない。しかし、ふとしたきっかけでカールはキューバサンドイッチのおいしさを知り、フードトラックを活用して調理・販売するという新しいビジネスを思いつく!

ちょっぴり感想!

作品冒頭、いきなり持ち味のラテン系ミュージックをバックにした調理シーンからスタート。けっして長いシーンではないのだが、ノリノリの映像・音楽はこちらの気分を高めてくれる。否が応でも期待感が増すこの演出は、最後まで裏切られることなく続いていく。

また、前半部分の脇役として人気俳優がちょこちょこ出演しているのもポイント。美人ソムリエにスカーレット・ヨハンソン、ちょっといけ好かない事業支援者にロバート・ダウニー・Jr、保守的な支配人にダスティン・ホフマン・・・こんな感じなので、なんというかジョン・ファヴローの幅広いコネクションが遺憾なく発揮されているような?

息子・親友とともにフードトラックビジネスを開始

中古のフードトラックを手に入れたカールは、かつての部下であり親友のマーティン、息子・パーシーとともにキューバサンドイッチの移動販売を開始。中古のトラックをキレイに掃除する作業、そして実際の接客と調理は3人の絆を強くし、さらにはカールに大切なことを思い出させていく。

カールは料理人としての自信・人気・やる気を取り戻していく中で、かつて自分を追い込んだ一因であるグルメ評論家と再会。はたして彼の活力に満ちた姿はグルメ評論家にどのように映るのだろうか?

ちょっぴり感想!

カールとマーティンが料理を心の底から楽しいと感じているところ、パーシーが父を手伝いながら充実感を覚えていくところは、観ているこちらも嬉しくなってくる。また、パーシーに関してただかわいい子ども担当ではなくて、SNSでの宣伝活動といったストーリー上の重要な役割を与えているのも好き。

そして、このフードトラックでの移動販売の部分では、この映画の醍醐味ともいえるグルメ・音楽・ロードムービーをたっぷりと堪能できる。マイアミ・ニューオーリンズ・オースティンなどアメリカ南部の風景と、ノリノリなラテンミュージックなどによってこの映画の盛り上がりは最高潮に。

使用されている曲はどれも名曲だが、個人的に推しておきたいのは『West Coast Poplock』。2pac・Dr.Dreによる『California Love』の元ネタとしても知られているこの曲は、劇中においても効果的に使われている。こちらのなんちゃって旅行気分を盛り上げてくれるのだ。

グルメ・音楽・ロードムービーが好きなら『Chef』がおすすめ

監督のジョン・ファヴローのエンタメ精神が凝縮した『Chef』は、グルメ・音楽・ロードムービーなどの要素が入り混じった映画。キューバサンドイッチのごとく濃厚で味わい深い作品なので、ぜひ楽しく食事しながら楽しんでみてはいかがだろうか。